不動産を売却した際には「譲渡所得税」という税金がかかります。それは相続をした空き家を売却する時も同様です。
しかし、一定の要件を満たした空き家を売却する場合、課税対象額から3000万円を控除できる特例があります。
本記事では、その特例を使うにはどのような要件を満たす必要があるのか、その特例の有無でどのくらい税金が変わるのかを解説していきます。
※前半では譲渡所得税について解説をしているため、ご存知の方は目次から読みたい箇所へ飛んでください。
もくじ
不動産譲渡所得税について
不動産譲渡所得税について解説していきます。
まず、譲渡所得税は「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」の2種類に分けられます。
以上のように区分されます。
そして、この2種類は何が違うのかというと、税率が違います。
短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 | |
所得税 | 30% | 15% |
住民税 | 9% | 5% |
簡単な表ですが、税率はこのように違っています。短期と長期では税率にほぼ2倍の差があることが分かると思います。
これは、利益目的不動産を買って転売する方などからは多くの税金を取ろうという考えかもしれませんね。
ちなみに相続で不動産を取得した場合、前所有者(被相続人)から所有期間は引き継げます。
不動産譲渡所得税の計算方法について
それぞれの税率が分かったところで、次は計算方法です。
以上のような式で計算をします。
それではそれぞれの項目を見ていきましよう。
譲渡価格
これは不動産を売却した価格です。3000万円で売れたら、譲渡価格は3000万円になります。
取得費用
これは不動産を取得した時に要した費用です。
売却した不動産が元々は購入したものであるなら、購入した際の価格や当時の仲介手数料などの費用を取得費用として、課税譲渡所得金額から引くことができます。
ただし、購入価格や仲介手数料の確認として、当時の契約書や領収書を提出する必要があります。
当時の契約書や領収書が残っていない場合や、先祖から相続によって引き継がれてきた不動産である場合は、取得費不明として、譲渡価格の5%を取得費用として計上します。
譲渡費用
これは不動産売却時にかかった費用です。
仲介手数料や測量費、解体費などが含まれます。これも取得費用と同様に、課税譲渡所得金額から引くことができます。
特別控除
今回解説する相続した空き家の特例などを指します。その他にも、自分が居住していた不動産を売却した場合の3000万円控除などがあります。
計算の例
それでは、不動産譲渡所得の計算をしてみましょう。
〇条件
所有期間:8年
譲渡価格:3000万円
取得費用:不明(3000万円×5%=150万円)
譲渡費用:150万円(測量費用:44万円 仲介手数料:105万円 印紙代:1万円)
特別控除:なし
〇計算
3000万円(譲渡価格)-150万円(取得費用)-150万円(譲渡費用)
=2700万円(課税譲渡所得金額)
2700万円(課税譲渡所得金額)×20%(長期譲渡所得による税率)
=540万円(長期譲渡所得による税額)
以上のような計算になります。長期譲渡所得を使えても意外と税額が多くなってしまいますね。
それでは、いよいよ相続した空き家売却時の特例について見ていきましょう。
相続した空き家売却時の特例について
この特例は、現在増え続けている空き家、老朽化して倒壊する危険のある空き家を少しでも減らすことを目的に作られている特例です。
要件を満たせば、課税譲渡所得金額から3000万円を控除できるという、非常に心強い特例になっています。
具体的な要件としては以下の通りになります。
このような要件になります。
少し要件が多いですが、重要な点は、
「相続開始の直前まで被相続人がその家屋に住んでいたこと」
「昭和56年5月31日以前に建てられた家屋であること」
「相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること」
以上の3点です。
相続開始の直前まで被相続人がその家屋に住んでいたこと
被相続人がその家屋に住んでいたかどうかは基本的には住民票で判断をされます。
また、相続開始の直前に、被相続人が老人ホーム等に住んでいても適用可能な場合があります。
適用可否の線引きが多少難しいため、詳しくは以下の国税庁のホームページを参考にしてください。2(1)ハ欄に記載があります。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
昭和56年5月31日以前に建てられた家屋であること
この「昭和56年5月31日以前」というのは旧耐震基準の家屋か否かを判断しています。
昭和56年5月31日以前の旧耐震基準の家屋は地震がきたときに倒壊の恐れがあり、そのような空き家が増えると危険なため、このような特例を作って減らしたいということですね。
昭和56年5月31日以前の家屋か否かは、家屋の建築書類が残っていれば確認できます。残っていない場合でも、家屋の謄本を取ったり、市役所で調べることで確認ができます。
相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
期限をつけないといつまでも空き家を放置してしまい、空き家を減らすという目的が達成できないため、相続から売却までの期限が設定されています。
令和1年4月1日に相続をした場合
令和4年の12月31日までに売却をすることで、特例の適用が可能
売却を考えてからすぐに売れるというわけではないため、この特例を適用したい場合は、相続をしたらなるべく早く不動産会社に相談をするとよいでしょう。
売却方法について
特例を適用するための要件について見てきました。では、どのように売却をすればよいのでしょうか。
この特例の目的は「空き家を減らすこと」なので、基本的には家屋を解体して更地にした状態で売却をすることが特例の条件になります。
しかし、家屋を残したまま売却しても特例を適用できることがあります。その方法は、新耐震基準に適合するように耐震工事をして、売却をすることです。
しかし、不動産屋として正直なことを言うと、新耐震基準に適合しても築年数の古い家屋では買い手が付きにくく、売却価格も期待できないです。
そのため、解体して更地として売却をしたほうが、手元に残る金額は多くなることがほとんどではないかと思います。
ただし、非常に立派な家屋であったり、どうしても思い出のある家屋を壊したくないという場合は、耐震工事をしたうえで家屋付きで売却をしていくのも良いでしょう。
計算の例
それでは、相続した空き家売却時の特例を使った税額計算をしてみましょう。
比較ができるように、先ほどの譲渡所得税の計算例と同じ条件で計算をしてみます。
〇条件
所有期間:8年
譲渡価格:3000万円
取得費用:不明(3000万円×5%=150万円)
譲渡費用:150万円(測量費用:44万円 仲介手数料:105万円 印紙代:1万円)
特別控除:相続した空き家売却時の3000万円控除
〇計算
3000万円(譲渡価格)-150万円(取得費用)-150万円(譲渡費用)-3000万円(特例)
=0円(課税譲渡所得金額)
0円(課税譲渡所得金額)×20%(長期譲渡所得による税率)
=0円(長期譲渡所得による税額)
先ほどの特例を使わない計算では540万円あった税額が、特例を使うことによって0円となりました。
使うには要件を満たす必要がありますが、このように恩恵の大きい特例ですので、売却時にはぜひ活用してみて下さい。
要件を満たしているかわからない、そもそも売却ができるか分からないという場合は、一度不動産会社に相談をしてみましょう。
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不動産売却についての全体像や流れがイメージできていないという方は、以下の記事を参考にしてみて下さい。
https://commu-life.com/2019/12/07/%e4%b8%8d%e5%8b%95%e7%94%a3%e5%a3%b2%e5%8d%b4%e3%81%ae%e6%96%b9%e6%b3%95%e3%81%a8%e6%b5%81%e3%82%8c%e3%82%92%e8%a7%a3%e8%aa%ac%ef%bc%81/